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  3. III-5 取締役の責任

任務懈怠責任

取締役の損害賠償については、会社法第423条に規定があります。

「取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(第423条1項)」

取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人と、役員等というくくりで規定されていますが、ここでは敢えて取締役の責任について書いていきます。

「任務を怠ったとき」の責任を「任務懈怠責任」といいます。

取締役は会社に対して、善管注意義務・忠実義務を負いますが、これらの義務に違反したとき、任務懈怠があったとされ、賠償責任が生じます。

任務懈怠責任が生じる場面としては、前回の競業取引、利益相反取引の他、監視義務違反による損害、特定に株主に対する利益供与、配当可能額を超えた違法配当などがあります。

取締役の責任の免除、軽減

取締役の任務懈怠責任に対する損害賠償については、株主全員の同意があれば免除できます。これはものすごくハードルが高いですね。大きい会社ではまず無理ではないかと思います。

株主総会での責任の一部免除

株主総会での特別決議で責任の一部を免除することが出来ます。ただし、取締役は善意無重過失であることが必要です。

一部免除額とは、下記の通りです。

「損害賠償額」-「最低責任限度額」=免除額

最低責任限度額とは、数年分の報酬と新株予約権で得た利益の合計額です。

最低責任限度額(第425条1項1号2号)
代表取締役 6年分の報酬額 左記の報酬額に合わせ、新株予約権で受けた利益の額
取締役 4年分の報酬額
社外取締役、会計参与、監査役または会計監査人 2年分の報酬額

例えば、代表取締役への損害賠償額が1億円で、その代表取締役が1000万円の報酬、ストックオプションで2000万円の利益を出していたとしたら、

1億-(6000万円+2000万円)=2000万円

2000万円が免責される限度です。つまり特別決議を経ても、この代表取締役には8000万円の損害賠償責任があります。免除があっても結構厳しい責任ですね。

取締役会での責任の一部免除

監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社は、定款で定めることによって、取締役の過半数の同意(取締役会設置会社では取締役会決議)によって、責任の一部免除をすることが出来ます。(第426条)

 

責任の連帯

取締役が会社に対して損害賠償を負う場合に、他の取締役もその損害賠償責任を負うときは、連帯債務となります。(第430条)

前回の「取締役の義務」で競業取引、利益相反取引は株主総会(取締役会)の承認の有無に関わらず、会社に損害を与えたら任務懈怠と推定されることを書きましたが、例えば、代表取締役の利益相反取引について、取締役会議事録に承認のハンコを押した取締役は、その損害について連帯債務者となります。
形だけの取締役であっても、議事録に署名押印することは責任がとても重いのです。