株主総会の招集方法は、法律で規律されています。
招集方法がすべての株主にとって不利益の無いようにするために、ルールを設けているのですが、そのルールは会社の規模により変化します。
大きい会社(取締役会設定会社)は株主の利害関係が複雑になるのを想定してルールを厳しくしていますが、小さい会社(非取締役会設置会社)は株主の間柄が近い事が多く、ルールはざっくりでいいでしょう。というような感じなので、そういう感覚で読んでいくと大枠が掴みやすいと思います。
まず、基本の条文に触れて、非取締役会設置会社と取締役会設置会社での異なるルールについてまとめていきたいと思います。
※今回、条文のカッコ書きを省略してところあります。
株主総会の招集方法
株主総会の招集については会社法第296条から第302条に規定されています。試験でも頻出ポイントですので、条文からしっかりと!
会社法第296条
会社法第296条(株主総会の招集)
- 定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
- 株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
- 株主総会は、次条第4項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。
1項 定時株主総会
1項は定時株主総会について書いています。上場企業では3月決算の会社が多いので、6月下旬に株主総会が集中するようです。
(総会屋対策として6月下旬に集中させる意図もあったようですが、今では慣行で6月下旬になっているようです。)
2項 臨時株主総会
2項は臨時株主総会はいつでも招集できると規定しています。
3項 取締役の株主総会招集の原則
3項には、株主総会の招集は原則的に取締役が行うことが規定されています。
会社法第297条
会社法第297条(株主による招集の請求)
- 総株主の議決権の百分の三以上の議決権を六箇月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
- 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
- 第1項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。
- 次に掲げる場合には、第1項の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。
一 第1項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
二 第1項の規定による請求があった日から八週間以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合
1項 株主による招集請求
少数株主は取締役に対し、株主総会の招集を請求することが出来ます。自ら招集するのではないことにご注意ください。ここを混同してしまうと、後の条文の理解が進みにくくなります。
少数株主権は、以前一覧にしたのでそちらも参考にしてください。(株式 I-3共益権)
2項 株式保有要件の緩和
2項では、非公開会社について6か月の株の保有の要件が緩和されています。
非公開会社では株主の変動がほとんどありません。少数株主権の濫用目的で株を取得することは難しいので、保有期間の要件はあまり意味がないのです。
3項 総株主の定義
3項は総株主の議決権について定義しています。株主が株主総会の招集を請求する場合は、株主総会の目的である事項を示さなければなりませんが、その事項についての有効な議決権の総数が1項のいう「総株主の議決権」になります。
4項 株主による招集
4項は、株主が自ら招集するための例外規定です。
噛み砕いていうと、招集を請求したのに放っておかれた場合は、裁判所の許可を得て、株主自ら招集することが出来るのです。
会社法第298条
会社法第298条(株主総会の招集の決定)
- 取締役(前条第4項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第302条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主総会の日時及び場所
二 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
三 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
- 取締役は、株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。次条から第302条までにおいて同じ。)の数が千人以上である場合には、前項第3号に掲げる事項を定めなければならない。ただし、当該株式会社が金融商品取引法第2条第16項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社であって法務省令で定めるものである場合は、この限りでない。
- 取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株主総会において決議をすることができる事項」とあるのは、「前項第二号に掲げる事項」とする。
- 取締役会設置会社においては、前条第4項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第1項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。
1項 招集の決定事項
第298条は、取締役(株主が自ら招集する場合は株主)が株主総会を招集する場合に決めなければならない事項を定めています。
定めるべき事項は、
- 株主総会の日時と場所
- 何のために株主総会を招集するのかの事項
- 株主総会に出席しない株主が、議決権を書面によって行使出来る場合はその旨
- 株主総会に出席しない株主が、議決権をインターネット等によって行使出来る場合はその旨
- 法務省令で定める事項
「法務省令で定める事項」は会社法施行規則に細かく規定されていますがここはスルーしましょう!
2項 株主1000人ルール
株主の人数が1000人以上の場合は、書面による議決権の行使について定めることが必要です。こちらが原則。
しかし、上場会社で法務省令に定める会社の場合はこの限りではないとしています。(おっと、また法務省令が出てきました。ここはスルーできません!)この法務省令は、会社法施行規則第64条を指します。
会社法施行規則 第64条 (書面による議決権の行使について定めることを要しない株式会社)
法第298条第2項 に規定する法務省令で定めるものは、株式会社の取締役(法第297条第4項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主)が法第298条第2項 (同条第三項 の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する株主の全部に対して金融商品取引法 の規定に基づき株主総会の通知に際して委任状の用紙を交付することにより議決権の行使を第三者に代理させることを勧誘している場合における当該株式会社とする。
つまり株主総会の通知とともに委任状を交付している上場会社は、書面による議決権の行使について定めなくてもよいということです。ちょっと複雑な構成ですね。
3項の読み替えによる効果
取締役会設置会社では、第298条第2項の1000人ルールのカッコ書きに対して読み替えがあります。
「株主総会において決議をすることができる事項」
↓
「株主総会の目的である事項があるときは、当該事項(第298条2項)」
読み替えてみても、ちょっと意味が分かりにくいですね?。
非取締役会設置会社では、前もって株主総会では事前通知なしでも様々なことを決めることが出来ます。
しかし取締役会設置会社の株主総会では、298条2項で定める事項のみを決議できます。(第309条5項)
これは予め通知した議題しか決議できないというルールです。
つまり予め議題を通知することで、その議題に議決権をもつ株主を算出するのです。
たとえば、ある取締役設置会社に議決権をもつ株主が1000人いたとしても、A案を決めるための株主総会を開催し、A案についての議決権を持つ株主が500人しかいない場合は、1000人ルールの適用外ということです。
4項では、株主総会を招集する機関が株主総会の事項を決定することを書いています。
取締役会設置会社では、1項各号の事項の決定は、取締役会の決議によらなければならないと規定されています。
後の回でもふれますが、取締役会設置会社の取締役は、取締役会の一構成員という位置づけなので、取締役が決定するという場面はあまり見られません。
(ちょっと長くなりましたので、一旦切って、次回につなげます!)