新株予約権とは
新株予約権とは、「株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいう。」と定義されています。ちょっとわかりにくい言い回しなので図解します。
新株予約権 図解
ここでは報酬として割り当てられるストックオプションを例にして説明します。
A時点において、1株100円で1万株購入できる権利を無償で付与されるとします。
1万株×100円=100万円の払込の時期は個々の契約によって変わりますが、通常の新株予約権は「権利の行使までに払い込む」ので、A時点ではまだ1万株×100円を会社に払う必要はありません。B時点までに払い込めばOK!
そして、株価の上下があり、ここぞという時点で、新株予約権を行使します。(時間軸B)
B時点において新株予約権を行使すると、A時点での約束通り、1万株を100円(100万円)で買う事が出来ます。
そして、B時点では株価は1株500円になっていました。すぐに1万株すべて売却すれば500万円になります。
つまり上の図のようにA時点で新株予約権の付与され、B時点で新株予約権を行使すれば、400万円の利益を受けることが出来るのです。
新株予約権の用途
新株予約権は、次のような場合に使用されます。
新株予約権の募集事項の決定
第238条(募集事項の決定)
- 株式会社は、その発行する新株予約権を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集新株予約権(当該募集に応じて当該新株予約権の引受けの申込みをした者に対して割り当てる新株予約権をいう。以下この章において同じ。)について次に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)を定めなければならない。
一 募集新株予約権の内容及び数
二 募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
三 前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額(募集新株予約権一個と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)又はその算定方法
四 募集新株予約権を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)
五 募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日
六 募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、第676条各号に掲げる事項
七 前号に規定する場合において、同号の新株予約権付社債に付された募集新株予約権についての第118条第1項、第179条第2項、第777条第1項、第787条第1項又は第808条第1項の規定による請求の方法につき別段の定めをするときは、その定め
- 募集事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。(特別決議による)
- 次に掲げる場合には、取締役は、前項の株主総会において、第一号の条件又は第二号の金額で募集新株予約権を引き受ける者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
一 第1項第二号に規定する場合において、金銭の払込みを要しないこととすることが当該者に特に有利な条件であるとき。
二 第1項第三号に規定する場合において、同号の払込金額が当該者に特に有利な金額であるとき。
- 種類株式発行会社において、募集新株予約権の目的である株式の種類の全部又は一部が譲渡制限株式であるときは、当該募集新株予約権に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を目的とする募集新株予約権を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
- 募集事項は、第1項の募集ごとに、均等に定めなければならない。
新株予約権の募集事項の決定も募集株式の募集事項の決定と同様に、原則、株主総会の特別決議で決定されます。
取締役会へ決定の委任が出来ることや、公開会社での「株主総会」→「取締役会」の読替えも募集株式と同様ですので、募集株式の発行を読んで、条文に当たると理解しやすいと思います。
仕組み上、新株予約権には2種類の払い込みがあります。一つは第246条の「募集新株予約権に係る払込み」ともう一つは第281条の「新株予約権の行使に際しての払込み」です。学習するうえで混乱しやすいところですので、注意が必要です。
第246条の払い込みは、新株予約権という権利を購入するための対価です。対して第281条の払い込みは新株予約権を行使して株主となるための払い込みです。
どちらの払い込みも金銭のみならず、金銭以外の財産の給付によって払い込みことが出来ますが、第281条の払い込みを現物出資によって行うと、原則的に検査役による調査が必要になってきます。これは変態設立の検査役の仕組みとほぼ同じですので比較しながら復習してみてください。
新株予約権は、実際にその権利を行使し株式を発行すれば、与える影響としては通常の募集株式と同様です。
ですから、発行の手続きや、株式発行の瑕疵に対する続きは、募集株式と似た内容になっています。
「募集株式の発行」「募集株式発行の瑕疵」「募集株式の発行無効の訴え」を確認し、類似点を掴んでください。