株式会社不成立の場合の責任

会社の設立において設立登記まで至らなかった場合、会社の不成立となり、すでに履行された払込金、設立費用の負担についての責任問題が発生します。この責任について、会社法第56条では次のように規定しています。

会社法第56条(株式会社不成立の場合の責任)

株式会社が成立しなかったときは、発起人は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する。

会社が成立しなかったときの後始末は、発起人が連帯して行う事になります。募集設立の場合は、発起人以外の引受人に対しても出資金の返金処理などの責任を発起人が負う事になります。

ところで発起人とは「定款に発起人として署名した者」と定義されます。
しかし、募集設立においては、募集広告やその他書面等に賛同者として氏名を記載することを承諾すると、定款に署名していなくてもこの「第6節 設立に関する責任」で説明する責任を負います。これを「疑似発起人」と言います。

この疑似発起人は過去問で出ているので知っている方も多いと思いますが、擬似発起人が出てくるのは募集設立ならではの話ですのでお間違えないように。
疑似発起人については会社法第103条4項に規定されています。

会社法第103条4項

  1. 第57条第一項の募集をした場合において、当該募集の広告その他当該募集に関する書面又は電磁的記録自己の氏名又は名称及び株式会社の設立を賛助する旨を記載し、又は記録することを承諾した者(発起人を除く。)は、発起人とみなして、前節及び前3項の規定を適用する。

会社法第57条1項の募集とは募集設立のことを指しています。募集設立において、募集広告や書面、ホームページに名前と設立に賛同する旨を記載知る事を承諾したものは発起人と同様の責任を負います。

順番が前後しますが、次に会社法第103条第1項の読み換え規定に注目してみます。

会社法第103条1項

  1. 第57条第一項の募集をした場合における第52条第二項の規定の適用については、同項中「次に」とあるのは、「第一号に」とする。

 

募集設立の場合には、会社法第52条第2項の「次に」を「第一号」に読み換えると書いてあるので、会社法第52条を読み換えてみてみましょう。

会社法第52条2項(読み換え前)
前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、発起人(第28条第一号の財産を給付した者又は同条第二号の財産の譲渡人を除く。第二号において同じ。)及び設立時取締役は、現物出資財産等について同項の義務を負わない。
一  第28条第一号又は第二号に掲げる事項について第33条第2項の検査役の調査を経た場合
二  当該発起人又は設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合
会社法第52条2項(読み換え後)
前項の規定にかかわらず、第一号に掲げる場合には、発起人(第28条第一号の財産を給付した者又は同条第二号の財産の譲渡人を除く。第二号において同じ。)及び設立時取締役は、現物出資財産等について同項の義務を負わない。
一  第28条第一号又は第二号に掲げる事項について第33条第2項の検査役の調査を経た場合

読み替え前が発起設立の場合の規定で、読み換え後が募集設立の場合の規定です。

募集設立の場合は、「職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合」の免責規定が排除され、検査役の調査を経ているときを除き、発起人・設立時取締役の責任が免れなくなり、無過失責任となっています。

募集設立の場合は、設立行為の蚊帳の外にいる引受人の存在を保護する必要があり、このような規定が存在しています。