以前の記事(II-3)で定款に変態設立事項の記載がある場合は検査役の調査が必要だと書きましたが、今回は、その検査役の規定について説明していきます。

検査役の選任に関する規定は第33条にあります。会社法第33条1項から11項までと、結構長い条文ですので、一つ一つ見ていきましょう。

まず第1項と第2項です。

  1. 発起人は、定款に第28条各号に掲げる事項についての記載又は記録があるときは、第30条第一項の公証人の認証の後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。
  2. 前項の申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き検査役を選任しなければならない。

会社法第28条は変態設立事項(II-2)についての規定でしたね。
定款に変態設立事項の記載がある場合は、公証人の認証後遅滞なく裁判所に検査役選任の申し立てをしなければならない、という規定です。

認証後」、「遅滞なく」、「裁判所に」です。

手続きの流れの時系列はしっかりとイメージを持っておきましょう。

 

会社法第33条第1項から第7項までの流れのイメージを作ったので、こちらを参照ください。

 

矢印の流れに参照条文を記しました。ではこのイメージを頭に入れながら会社法第33条の3項から7項までの条文を読んでいきましょう。まずはマーカー部分だけを追って読んでみてください。

  1. 裁判所は、前項の検査役を選任した場合には、成立後の株式会社が当該検査役に対して支払う報酬の額を定めることができる。
  2. 第2項の検査役は、必要な調査を行い、当該調査の結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)裁判所に提供して報告をしなければならない。
  3. 裁判所は、前項の報告について、その内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するため必要があると認めるときは、第2項の検査役に対し、更に前項の報告を求めることができる。
  4. 第2項の検査役は、第4項の報告をしたときは、発起人に対し、同項の書面の写しを交付し、又は同項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供しなければならない。
  5. 裁判所は、第4項の報告を受けた場合において、第28条各号に掲げる事項(第2項の検査役の調査を経ていないものを除く。)を不当と認めたときは、これを変更する決定をしなければならない。

マーカー部分を追って、大枠を理解した後で、もう一度、条文を読み直してくださいね。

ここまでが検査役の選任→調査→裁判所による変更の決定までの流れです。

次に8項、9項を見ていきます。

  1. 発起人は、前項の決定により第28条各号に掲げる事項の全部又は一部が変更された場合には、当該決定の確定後一週間以内に限り、その設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができる。
  2. 前項に規定する場合には、発起人は、その全員の同意によって、第7項の決定の確定後一週間以内に限り、当該決定により変更された事項についての定めを廃止する定款の変更をすることができる。

変態設立事項(会社法第28条各号)の全部または一部が裁判所より変更された場合、その決定が確定してから1週間以内は株の引受の意思表示を取消すことができ、発起人全員の同意で変更された変態設立事項の定款規定を廃止することができるという規定です。

この8項と9項はワンセットで理解したほうが良いと思います。

例えば、8項の規定により、ある発起人が現物出資をあきらめて、設立時株式の引き受けを取り消した場合、9項による定款変更をしなければ、出資の履行が果たされなくなってしまいます。そうすると会社が成立しなくなります。

 

次の10項は例外規定が置かれています。10項各号に該当する場合は検査役調査は不要になります。

では条文に当ってみましょう。

10.前各項の規定は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項については、適用しない。

一 第28条第一号及び第二号の財産(以下この章において「現物出資財産等」という。)について定款に記載され、又は記録された価額の総額が五百万円を超えない場合 同条第一号及び第二号に掲げる事項
二 現物出資財産等のうち、市場価格のある有価証券(証券取引法 (昭和23年法律第25号)第2条第1項 に規定する有価証券をいい、同条第2項 の規定により有価証券とみなされる権利を含む。以下同じ。)について定款に記載され、又は記録された価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えない場合 当該有価証券についての第28条第一号又は第二号に掲げる事項
三 現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士(外国公認会計士(公認会計士法 (昭和23年法律第103号)第16条の2第5項 に規定する外国公認会計士をいう。)を含む。以下同じ。)、監査法人、税理士又は税理士法人の証明(現物出資財産等が不動産である場合にあっては、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価。以下この号において同じ。)を受けた場合 第28条第一号又は第二号に掲げる事項(当該証明を受けた現物出資財産等に係るものに限る。)

カッコ書きが多くてため息が出ますが、おおよそ次の通りです。

一、現物出資・財産引受の定款記載価額の総額が500万円を超えない場合。
二、市場価格のある有価証券で、定款記載の価額がその市場価格を超えない場合。
三、弁護士、公認会計士、税理士等の証明を受けている場合。(不動産については不動産鑑定士

※株式会社の設立に直接関与する者は財産の評価をすることはできません。これは11項に規定があります。各号に列挙していますが、理解するのは一号から三号まででいいかな?と思います。

11.次に掲げる者は、前項第三号に規定する証明をすることができない。

一  発起人
二  第28条第二号の財産の譲渡人
三  設立時取締役(第38条第1項に規定する設立時取締役をいう。)又は設立時監査役(同条第2項第二号に規定する設立時監査役をいう。)
四  業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者
五  弁護士法人、監査法人又は税理士法人であって、その社員の半数以上が第一号から第三号までに掲げる者のいずれかに該当するもの

例えば、不動産鑑定士が発起人の一人になっている設立中の株式会社において、その不動産鑑定士が自ら現物出資財産の鑑定をする事は出来ません。

ちょっと長い条文ですが、この辺りは条文理解が重要ですからがんばってください!